春爛漫、桜満開ですが皆さま、いかがお過ごしでしょう?
このあいだまで寒かったのに、こうも変わるものなんでしょうかね?
いつもアタマにチョウチョが舞っております藤沢です。
だれか私ごと捕まえて…って(?)、そんなことは置いといて、今日は屋根の話しです。
今回は長くなりそうなので、マクラ話しは少なめでサッサと本題です。
で、屋根といっても今回は葺(フ)いている材料の話ですけど、お付き合いください。
●皆様のお宅はなんですか?藁(ワラ)ですか?茅(カヤ)ですか?ヤシの葉ですか?杮(?)ですか?って、今の時代そういったお家は少ないですよね。
(※ちなみに今のところ、弊社で上記のモノは扱ってないようです…。)
今回は、これら自然の植物素材から。
まず、古今東西、住居のそばで比較的大量にあるものが建築材として選ばれました。
さらに水に強くて、比較的軽くて、風通しもあって腐りにくく、壊れても直しやすいものといえば以下のものになったようです。
①ワラぶき;稲のワラは軟らかく、残念ながら長持ちはしません。
1~3年とも言われています。
日本では稲ワラは縄、俵、畳、草履、ムシロ、壁材などなどイロイロと使うため、あまり屋根に使うと言う事はありませんでした。
お隣の韓国などでは、昔の建物『草家(チョガ)』は稲ワラを多く使ったようです。
(でもですね…、日本に似た漁労文化の済州島では、茅葺きだったそうです。不思議ですね…。神話も北九州のものに似てるんですよね。何より近いし…。海女さんいるし…。魚うまいし…。どっちが元祖だとか、偉いとか正直どーでもいいんですけど不思議です…。)
ちなみに海賊王になりたい人がかぶる帽子の材料で有名な『麦ワラ』は、繊維が硬く丈夫なので稲よりは耐久性がありますが、日本やヨーロッパなどではあまり屋根には使われなかったようです。
ヨーロッパでは、やはり三匹のこぶたの得意技とされるように、家畜小屋に敷きつめたり餌にまぜたりという用途だそうです…。
②茅(カヤ)ぶき;カヤってなーに?と思いますでしょう?一般的にイネ科のススキの事です。
(正しくは『チマキ:茅巻→粽』とか’『茅(ち)の輪くぐり』の『チガヤ』のこと)
カヤは萱とも書きます。芦・葦(アシ・ヨシ)と厳密にいえば違うのでしょうけど、ほぼ同じと考えていいものです。
宇佐八幡宮の『菰枕(こもまくら)』や、昔の刑罰で有名な『菰巻(こもまき)』とか、頂きもの好きな『おこもさん』のコモとも、草丈が少し短いので厳しくいえば違うのですが、同じものと考えている地域もあるようです。
浦島太郎さんのおしゃれアイテムの『腰ミノ』もコモ製だとか…。
これがほんとの『コモ デ ギャルソ…』って我ながら恥かしいわ…思いつくんじゃなかった…。
・・・ともかく、カヤぶきというものが日本では一般的です。
なにせ、日本は『葦原の中つ国』というくらいに、比較的水辺などにアシ・カヤは多く自生していますし、カヤは油分があるため水に強く、長さもあるので水切れもいいし、硬くて丈夫なので、切りそろえるとエッジが立ってカッコイイ。断熱性だってあるので雪国OK!。
さらに、いったん葺くと、ちゃあんと囲炉裏の煙を当てていたら、30年以上はもつという。もう完璧。
ただ、燃えやすいんですけどねぇ…。
(代表的なものに、飛騨越中の合掌造りや東日本の兜造り、景観としては京都府美山町が有名ですね。あと、絵画ですが、画家 向井潤吉さんの鄙びた茅葺きと澄んだ空が美しくていいですよね。)
ほぼ完璧な屋根材。だからでしょう、日本人は この素材を特に好んだようです。
昔は村の近くに『茅場(かやば)』というような「寄り合い地(共有地)」があって、毎年正月前頃に村人総出で刈り取りをします。
その後、刈った場所で正月飾りや餅を焼く『とんど焼き(または、どんど焼き)』をしたわけです。
さらに、この刈ったカヤは乾燥させ、村の家の順番に従って葺きなおしに使われました。
これを『頼母子(たのもし)講』や『無尽講』などといい、今でも地域でカヤではなく、お金を出し合い、その年の順番の人に全額が融通されるという、うらやましい形でのこっているところもあります。
また、村人総出の葺き替え作業は、共同作業の『結(ゆい)』の一つとされ、村人を互いにつなげあう大切な行事でした。
・・・でも、いったん村八分にされると(実際、具体的には何悪いことしたらなるんでしょうかね?)、この屋根葺きからもツマハジキにされたようです。
家の屋根を見たら一目でわかる、家族連帯責任の罰って、なんかこわいですよね・・・。
さて、これだけ書くとお分かりでしょう!(なにが?)
たいがい、あなたの前にあるクサ葺きっぽい農家はカヤ葺きっぽいのです!
断言しましょう!
たぶん、決して(?)ワラぶきなんぞではありません。
ワラと比べてカヤ葺きは美しいんです! 長持ちするんです!! セクシーなんです!!!?
なんか最後は少しズレましたけど、本当に魅力的です。
今でも、古いお寺に茅葺きのものがあったりしますし、美しい茅葺き神社の門としては、熊本県の人吉にある、『青井阿蘇神社』の国宝の神門が有名です。
あの司馬遼太郎さんも絶賛の建物です。
一度見に行ってみて下さい。感動もんです。放心もんです。ワタクシここで数時間木陰で眺めながら過ごしてしまった過去があります…。(こんなだから、イイトシして独身なんです!あーもーイイんですって!)・・・やれやれ。
③日本では、ヤシの葉葺きというのはあまりありませんが、蘇鉄や芭蕉の葉を交差しながら編み込んで、網代(あじろ)にして雨よけにしたものは、簡易な方法として南西日本にはあったようです。
竹の網代は今でも数寄屋建築で使われている品の良いものですよね。
で、この竹の小さいもの、笹・篠(シノ)も網代に織り込まれました。
軽くて、繊細で、使い勝手が良い、これが屋根の明りとりや窓の雨よけとされていますと、そのメの間から細く淡く光が差し込みます。これが雲間の朝日のようなので、いつのころからか、この朝日の事を『東雲』と書き『しののめ』と(無理やり?)読ませるようになりました。
風流ですよねー、この語感と当て字のセンス、すごいですよね。私には思いもつきませんわ…。
④さて最後が、難読漢字『杮』葺きです。果物の『柿(かき)』とはビミョーにちがう漢字なんですよねー、これ。
私もこのこと知った時、まーどっちでもいいような…と正直思いはしましたが…。
で、漢字の右側の『市』が『亠』+『巾』が『かき』です。
それで、この難読漢字は『一』+『巾』。つまり上まで突き抜けてるんです。
・・・『こけら』と読みます。
3ミリぐらいの厚さの木の小さな板の事で、これを屋根板の上に重ねて雨よけにしたものです。(現在は竹釘で止めるのが多いですが、棒と石で固定したものが昔は多かったようです。
)
その昔、割に使いやすかったのでしょう、歌舞伎小屋の屋根にも葺いたこの『こけら』。
職人さんが、残した切れっぱしを工事の最後に、当然ホウキなどで払ったんですね。そうしたばかりの真新しい舞台で演じました歌舞伎の新しい興業、これが『こけら落とし』という由来だそうです。
これは古代、格式の高い様式でもあったようで、別名『板葺き』とよばれ、宮殿(飛鳥板葺宮など)にも使われたとされています。
更にくだって、板が普及した時代(鉄が増えて、大きなノコで製材が盛んになった室町時代ごろ)の町屋の屋根はたいがいコレだったようです。木曾の妻籠宿や南木曽宿のものがイメージしやすいですよね。
他にも、もっとも格式のあるものとしては、神社や仏閣、紫宸殿(天皇の執務する宮殿)にも使われている『檜皮(ひわだ)葺き』があります。これは檜(ひのき)の木の皮を丁寧に剥いで乾燥、長さを揃えたものを、これまた丁寧に重ねて葺いて竹釘で止めたものです。
あと変ったものに、名湯別府温泉の竹瓦温泉に名が残る『竹瓦』なんてのもありますが、まあ今回はこの辺で。
またいつか、現実的な現代の屋根葺き材の話しをしたいと思います。
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